
教育現場でのAI活用と「安全な環境」の必要性
テクノロジーの進化が加速度的に進む現代において、生成AIは私たちの日常生活やビジネスの現場に深く根付く「現実のツール」となりました。文章作成、画像生成、そして動画生成と、わずか数年前には想像もできなかったようなクリエイティブな作業が、キーボードを叩くだけで実現する時代を迎えています。
しかし、AIを教育現場に導入するにあたっては、先生や学生や保護者にとって、大きな壁があります。「プライバシー保護」と「情報漏洩リスク」という重要な問題です。現在主流となっている多くの生成AIサービスのデータの扱いは、利用条件や設定によって異なります。
今回は家族の写真を外部の生成AIサービスにアップロードせず、PC内で生成処理を行う方法を採用しました。
「最先端のテクノロジーに触れさせたい。しかし、生徒とご家族のプライバシーは守らなければならない」
そんな教育現場が抱えるジレンマを打ち破る一つの最適解が、外部ネットワークにデータを送信せず、手元のパソコン本体が持つ計算能力のみでAIを駆動させる「ローカルAI」という仕組みです。
2026年9月5日(土)に、鹿児島県南さつま市加世田にある「鳳凰高校」(学校法人希望が丘学園)にて、高校生を対象に特別授業が開催されました。サイコムはパートナー企業として、高性能PCやAIの環境構築、運用面でサポート。この特別授業の模様をお伝えします。
南さつま市から未来へ。鳳凰高校・中村太悟先生の「挑戦する教育」
鳳凰高校と中村先生について

鹿児島県薩摩半島の南西部に位置する南さつま市。豊かな自然に囲まれたこの風光明媚な地にある鳳凰高等学校は、普通科・文理科・看護科を擁し、地域医療や最先端の学びを積極的に取り入れている、活気のある学校です。
今回の特別授業を主催されたのは、同校の学校戦略支援室室長を務める、中村太悟(なかむら だいご)先生です。中村先生は、学内で「サイエンスクラブ」の顧問を務められており、これまでにも3Dプリンターやレーザーカッター、プログラミング、さらにはVR機器を使った体験など、常に「生徒の知的好奇心を大いに刺激する体験」を提供し続けてきた、情熱あふれる先生です。

「地方の高校であっても、いや、地方だからこそ、世界と直結する最先端のテクノロジーに触れる機会を、生徒たちに積極的に作ってあげたいのです」と中村先生は熱く語られます。
今回、中村先生が着目されたのが「動画生成AI」でした。生成AIの裏側で一体どのような仕組みが動いているのか、そしてそれを「自分がどのように主体的に使いこなしていくか」を肌で体験させたいという考えがありました。
ローカルAIを動かす高性能なPCが必要に

授業のテーマを「家族への感謝を伝える」動画をAIにて生成するとしたことで、「プライバシーの問題」が浮上しました。ご両親や生徒本人の顔写真を、一般的なクラウド上のAIサービスにアップロードさせるわけにはいきません。そこでたどり着いた答えが、オフライン環境で動作する「ローカルAI」であり、ローカルAI環境を実現するためのハイスペックなPC環境の調達だったのです。
なぜ「ローカルAI」なのか。サイコムが教育現場に提供する価値と商品開発やビジネス現場でのAI活用
鳳凰高校の課題に対し、講師をアサインしマシンと環境を提供

この中村先生からの熱意あるオファーに、サイコムがパートナー企業の協力も得ながら、高校生への授業を担当する講師をアサインし、ローカルAIの環境構築を行いました。使用するAIモデルや処理内容に応じたGPU・メモリーなどを備えるPCが必要で、今回は授業内容に合わせた構成を用意しました。
実は近年、サイコムのBTOパソコンは、こだわりの強いゲーマーや個人クリエイターの方々からだけでなく、企業(BtoB)や大学・各種研究機関からの「ローカルAI環境の構築」を目的としたお問い合わせが増えています。
企業が業務効率化や新たな価値創造のためにAIを導入しようとする際、社外秘の重要なデータや顧客情報を外部のクラウドAIに学習させることは、コンプライアンスの観点から非常にリスクが高い行為となります。そのため、「自社内で閉ざされたネットワーク(ローカル環境)において、独自の大規模言語モデル(LLM)や画像・動画生成AIを安全に動かしたい」というニーズが、高まっています。
サイコムは、プロフェッショナル向けの高性能GPUを複数搭載したAI開発・運用向けワークステーションの展開を通じて、こうした高度でシビアな要求に日々応え続けています。
今回の鳳凰高校への支援は、そうしたサイコムが培ってきたBtoB向けAIソリューションのノウハウを、教育現場に投入する形となりました。
今回、サイコムはCPU「Intel Core Ultra 7 270K Plus」、GPU「GeForce RTX 5060 Ti(16GB)」を搭載したPC「G-Master Velox III Intel Edition」を10台用意。
前日から設営で入り、講師の小泉さんがカスタマイズした授業で使うAIシステム「ComfyUI」をインストール。

講師は、デジタル・AIアーティストの小泉薫央さん

マシンやソリューションが整ったところで、次に重要になるのは「誰が教えるか」ということです。単なるソフトウェアの操作説明で終わらせるのではなく、AIを用いた表現の最前線で活躍するプロフェッショナルの思想や哲学に直接触れてほしい。その強い思いから白羽の矢が立ったのが、デジタルアーティストであり、AIアーティストとしても名高い小泉薫央さんです。映画『ソニック・ザ・ムービー』やゲーム『メタルギアソリッド V』などのエフェクト担当などの最先端の実績があります。
デジタルハリウッド大学院を卒業後、エフェクトアーティストとして映画やゲーム、アニメ制作に従事。爆発シーンの爆発物の飛散の様子、煙、炎の動きを本物の動きのように制作する専門家だったそうです。


その後、フリーランスとなり、生成AIを使った作品制作を行っています。日本を代表する企業の映像やゲーム制作の実績も多く、業界のトップランナーの1人です。
企業の新商品の動画制作などにおいては、機密情報が含まれるため、ローカルAIを使った作業が中心とのこと。今回の授業の講師に最適な方に来てもらいました。




特別授業「動画生成AIで、大切な人に感謝を伝えよう」

今回、鳳凰高校の生徒が挑戦するのは、大切な人に感謝を伝える「動画の生成」。生徒たちには、事前に動画素材として自身や家族の写真を用意してもらいました。
今回の授業のメインとなる作業は、事前に用意した環境で写真の取り込みやプロンプト・設定の調整を行い、動画を制作することです。
ステップ1:クラウドAIとローカルAIの違いと「ComfyUI」の使い方

クラウドAIは、最新のシステムが使える半面、クラウドにアップした文章、画像や動画などの素材データは、AIの学習に使われるという大きなリスクを小泉さんが説明。企業の新製品などは、発表前に外部に情報が漏れることは避けなければならないため、小泉さんのオフィスのPCでローカルAIを構築しているとのこと。ハイスペックのPCが多数必要になるため、電気代を節約するために太陽光発電などを活用しているそうだ。
授業で使用する「ComfyUI」は、小泉さんが今回の授業のためにセットアップしたもの。生徒たちに使い方を丁寧に説明をしてくれました。

ステップ2:自身や家族の写真を使って動画を生成する

生徒たちの机には、1台1台サイコムの「G-Master Velox III Intel Edition」を用意しましたので、順番待ちなどなく触りながら説明を受けることが出来ます。生徒たちが、用意した自分の成長記録などの写真、家族と一緒に写った想い出の写真などをパソコンに取り込みます。
その画像データを使い、自身がイメージする動画のシーンを文章にして「Comfy UI」に指示を行います。中村先生との相談で、生徒が作るシーンは、4つと決めてあります。この4つのシーンをどのように構成するか、それぞれのシーンをどのような映像にするか、生徒たちの工夫のしどころです。講師の小泉さん、中村先生、サポートとして入ったサイコムのスタッフが教室内を細かく回りながら、生徒たちの試行錯誤に寄り添い、直接サポートを行います。

時にはAIが想定外の面白い動画を生成してしまい、隣の席の生徒と一緒に大笑いする微笑ましい場面も。最新のテクノロジーを介して、教室全体が「創作する喜び」という一つの大きな熱気にすっぽりと包まれてました。

講師やスタッフの助言を受けながら、生徒たちはプロンプトや設定を調整し、イメージに近い動画へと仕上げていきました。
今回は、生徒が授業の対象だったのですが、すごく楽しそう!と手の空いた先生たちも、教頭先生や学校の写真を元に、ワイワイやりながら動画を生成し大いに盛り上がりました。
教頭先生の写真を素材にして楽しむなどが出来る雰囲気、職場としても鳳凰高校は良い学校のようです。

ステップ3:動画を完成し、保護者に向けて発表会

生成AIによる動画生成がはじめての生徒が多い中で、細かなチューニングに時間を費やし生徒の手による「大事な方への感謝の動画」が完成しました。生徒の保護者が教室に集まり、わが子が作った動画を見る発表会となり、これが授業のフィナーレとなりました。教壇に設置された大型モニターに、生徒が丹精込めて作った短い動画が次々と映し出されていきます。
ある生徒の作品は、少し無表情だったお父様の昔の写真が、AIの力でゆっくりと柔らかな笑顔に変わり、その背景には「いつもありがとう」というネオンサインが暖かく浮かび上がるという、非常にポップで愛情あふれるものでした。
それぞれの生徒が、授業の感想や苦労したポイントなどを説明してくれましたが、生徒一同とても楽しい授業だったようです。


授業を見守られていた保護者のお一人も、感慨深げにお話ししてくださいました。
「テレビのニュースなどで、生成AIの危険性や個人情報の流出といった話題を見聞きするたびに、正直なところ不安を感じていました。でも今日、こうして学校の閉鎖された安全な環境(ローカルAI)の中で、プライバシーに最大限配慮しながら最新技術を学ばせてもらえる様子を目の当たりにして、本当に安心いたしました。何より、子どもが私の写真を使って、一生懸命に感謝の動画を作ってくれたこと、これは私たち家族にとって一生の宝物になります」

講師の小泉さんも、大変満足げな表情でこの日の授業を振り返りました。
「生徒たちの新しいものを吸収する飲み込みの早さと、固定観念にとらわれない自由な発想力に、教える側の私自身が強く刺激を受けました。今日教室で使ったPCのような、強力で安定したローカル環境さえあれば、彼らはいつでもプロと同じツール、同じ土俵で表現を深く追求することができます。
AIという頼もしい『パートナー』とともに、彼らがこれから一体どんな素晴らしい未来を描いていくのか、本当に楽しみでなりません」
今回の特別授業で使用したカスタマイズPC
G-Master Velox III Intel Edition

| 【G-Master Velox III Intel Edition】カスタマイズ構成 | |
|---|---|
| CPU | Intel Core Ultra 7 270K Plus (3.7GHz/24コア/24スレッド) |
| メモリ | DDR5-5600 16GB(16GB×1) |
| マザーボード | Intel B860チップセット |
| SSD | 1TB(NVMe/M.2 SSD) |
| ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti(16GB) |
| 外形寸法 | 幅215×奥行き473.5×高さ454mm |
まとめ
クラウド型のAIではなく、ローカルAIを使い安心・安全に生成画像や生成動画を制作する取り組みをご覧頂いた。このような方法であれば、十分に教育現場でも活用できると感じた。
サイコムでは、今回のような取り組みを推進していくとのこと。今回の記事を読んで、関心がある企業や団体があれば、サイコムとのコラボレーションを検討してみてはいかがだろうか。
「今回は、様々な方の協力を得て、鳳凰高校にてとても良い授業をサポートさせて頂くことができました。このような機会を頂き誠にありがとうございました。
サイコムでは、自社内の機密情報をセキュアに守りながら、AIを日々の業務に活用して生産性を高めたいという企業様や、外部に出せない膨大なデータをクローズドな環境で高度に解析したいという研究機関様への最適なマシンのご相談を受け付けています。
お気軽にサイコム法人窓口にご相談ください。」(サイコム マーケティングマネージャー 佐藤さん)

北海道の牧場で馬と戯れる日々を経て、パソコン雑誌やWEBニュース媒体の編集長を歴任する。Athlonに心奪われ、Xeonに絶対の忠誠を誓ったのも今や昔。現在は、編集業を中心に、原稿執筆からカメラマン、果てはアニメの宣伝プロデューサーまで、本業不明の生活を送る。ユーザーの心をがっつり掴む各種オウンドメディアを運営中。 プロフィールはこちら
BTOパソコン売れ筋ランキング
(9月1日~9月30日)
-
- 1位G-Master Spear 2 X870A
- Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズを搭載するミドルタワー型ゲーミングPC。高性能と高拡張性を実現したゲーマー向けハイエンドモデルです。
-
- 2位Radiant GZ3600X870A
- Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズ搭載ATXミドルタワー型モデル。BTOならではのカスタマイズの幅が広いスタンダードなモデルです。
-
- 3位G-Master Velox II AMD Edition
- コスパ重視のゲーミングPCならコレ!メーカー・型番も明記された安心のオプションパーツからカスタマイズができる、BTOパソコンが初めての方にもオススメな高品質ゲーミングPCです。
-
- 4位G-Master Spear 2 Z890i
- AI時代の新CPU、Intel Core Ultraプロセッサを搭載するミドルタワー型ゲーミングPC。高性能と高拡張性を実現したゲーマー向けハイエンドモデルです。
-
- 5位G-Master Velox III AMD Edition
- 高品質なパーツを採用した納得の標準構成と厳選されたオプションパーツでシンプルなカスタマイズが楽しめる新機軸のゲーミングPC!AMD Ryzen 9000シリーズ搭載モデルです。
-
- 6位Premium Line X870FD-A
- 「いいものを永く」のコンセプトで標準2年保証、無償オーバーホールなど末永くご愛用いただくためのアフターサービスが充実した、AMD Ryzen 9000シリーズ搭載のプレミアムPC。
-
- 7位G-Master Velox Campio Edition 2026
- EAA!!主催「ゲーマー国勢調査」W受賞記念の200台限定モデル。AMD RyzenプロセッサとRADEONシリーズを搭載するハイパフォーマンスなPCにキーボード、マウス、マウスパッドをセット。さらに3年保証が付いたお買い得モデルです。
-
- 8位Silent-Master NEO B850A
- こだわりのNoctua製空冷CPUクーラーを採用し、エアーフローと静音性のバランスを極めた静音PC。AMD Ryzen 9000シリーズを搭載するATXミドルタワー型モデル。
-
- 9位G-Master Velox Mini 2 B850A
- ゲーミングPCはもっと小さくても良い。縦置きも可能な容量21.3リットル筐体にAMD RyzenプロセッサとGeForceシリーズを搭載するコンパクト&パワフルなゲーミングPC。
-
- 10位G-Master Hydro Extreme X870A
- BTO初、サイコム独自に水冷化したGeForce RTX5090搭載!Zen5アーキテクチャ採用のAMD Ryzen 9000シリーズとの組み合わせで、最高のパフォーマンスながら冷却性能と静音性のバランスを高次元で両立したデュアル水冷ゲーミングPC。
